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【英語習得】Atsueigoがイマイチと感じる理由

今回は、ATSUさんという方が運営するそこそこ名の知れた英語学習メディア Atsueigo に対する批判寄りの記事になります。

私がATSUさんやAtsueigoを知ったのは、オーストラリアで知り合った日本人の友人からATSUさんのYouTube動画を紹介されたからです。

オーストラリアに来て特に1年目は(ちなみに2022年2月現在は4年目)、『どうやったら英会話が伸びるか』について考えることがよくあったので、ATSUさんの動画にも興味がわき、いくつか見させていただきました。

 

彼は日本で生まれ育った日本人。英語が得意らしく、ネイティブスピーカのように話せるようになるのを目標に相当ストイックに勉強してきたのだとか。たしかに私から見ても、彼の英語がハイレベルなのは間違いなさそうです。

ただ、「彼が英語習得の方法を確立させた成功者なのか?」、「彼が提唱する学習法が本当に効果的なのか?」と聞かれると、正直、簡単に肯定できません。

私はATSUさんや彼の学習法のことを調べつくしているわけではありませんが、いくつか見たYouTube動画とコメント欄の感じ、紹介してきた友人から聞いたATSUさんの話、たまに Instagram などで表示される彼の広告、などなどから察するに、世間が持つ彼のイメージは「英語をめちゃくちゃ勉強してペラペラに話せるレベルなった日本人」みたいな感じだと思います。

私は、この『ATSUさんが作り上げた彼自身のイメージや成功ストーリー』がとても危険だなと感じています。ここでの”危険”とは、日本人の英語学習者に対して悪影響が懸念されるという意味です。悪影響としては、モチベーションを失ったり効果的な英語習得ができなかったりすることが考えられます。

 

Atsueigoによる悪影響が懸念される点は大きく2つあります。

  1. 高すぎる目標設定
  2. イマイチな学習法の提唱記載箇所に飛ぶ

これらそれぞれについて書いた後に、『Atsueigoはお金儲けが先行しているかも記載箇所に飛ぶ』という印象についても述べます。

1.高すぎる目標設定

私がまず彼から感じるのは、目指すべき姿・理想像が非常に高いことです。彼の肩書は「英検1級、TOEIC満点、IELTS8.5点・・・で、英語がペラペラ」、目標は「ネイティブスピーカと同レベルになること(あるいは既にネイティブ並みとの自己評価かもしれません)」。あたかもそれこそが英語習得のあるべき目標であるかのような発信も見られます。

高度な英語資格を取ることや資格試験で高得点を取ることは、多くの英語習得者にとってハードルが高く、「英語が話せるようになりたい」という人の目標設定として必ずしも正しいとは言えません。

そして非常に重要な点として、必ずしも「資格試験の点数が高い人」=「英語のコミュニケーション力が高い人」ではないことに注意が必要です。これは、資格試験の点数が高いのに実践的な英語力、特に英会話力が低い日本人(自分自身も含む)を何人も見てきたので、自信を持って言えます。

 

また、英会話レベルの目標として「ペラペラになること or ネイティブスピーカと同レベルになること」もハードルが高すぎると思います。

特に『ネイティブスピーカと同レベルになること』は、発音、アクセント、自然な英語表現、会話中のレスポンスの速さやナチュラルさ等々、いくつかの側面から見ると、ほぼ不可能に近い目標とも言えるかもしれません。それほど、ネイティブスピーカと第二言語として英語を学ぶ人(ただし幼少期を英語圏で育った人を除く)との間には、努力では簡単に埋まらない大きな差があります。私個人的にはATSUさんの英語も、ネイティブスピーカではないと容易にわかるレベルに見えます。

 

英語習得においてこのように目標を高く設定しすぎると、自身と目標との間の大きなギャップにストレスを感じ、英語習得のモチベーションが落ちてしまう懸念さえあります。

英語の本質は「コミュニケーション」なので、伝えたいことが伝われば良いわけです。そのために『TOEIC満点』や『ペラペラ』である必要はありません。

 

英語を学習する方は、英語が話せるようになりたい理由やモチベーションを各々持っているかと思います。『旅行先で簡単なコミュニケーションを取りたい』、『仕事で必要』、『好きな俳優のインタビューを理解したい』、『受験のため』などなど。

各々の理由やモチベーションによって設定すべき目標は変わってくるはずで、ほとんどの方にとって高すぎるハードルは必要ないはずです。私自身、英語圏での生活4年目(職場は日本人ゼロの現地企業)で今後も英語圏で長く生活する予定ですが、生活に困らない程度にゆっくり英語が伸びればいいやーくらいで考えています。

多くの英語学習者は、設定するハードルを低くし、もうちょっと肩の力を抜いて英語習得に取り組んでもいいのではと思います。そして英語学習のアドバイスをする側の人間には、そうした硬すぎないイメージ作りや柔軟な目標設定の有り方などを発信してほしいものです。

2.イマイチな学習法の提唱

英語をある程度のレベルまで習得した方なら、おそらく誰もが、良い/良くない学習法について個人的な見解があるのではないかと思います。

私が信じる良い学習法は、総じて、実践を通しての英語習得です。私が最も効果的と信じる習得法は、実際にコミュニケーションを取ること(実生活での会話、メールのやりとり、英語でブログを書くなど)。次に最も効果的なのは、英語圏のリソース(英語圏のニュース記事、英語で書かれた洋書、映画、テレビ番組、YouTube動画など)に触れ、そこから英語を学ぶことです。

これらの習得法は英語コミュニケーションそのものなので、もちろんリーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの全てをカバーしています。

 

一方で、ATSUさんが提唱し販売までしている『単語帳』の使用や『学習法動画講座』の視聴は、私が信じる”良い学習法”からことごとく外れてしまいます。

特に、成績の善し悪しは置いといたとしても高校レベルの英語まで学校で習った方なら、もう単語帳や学習法動画などを見る段階をとっくに超え、より実践的な方法に重きを置くべきと思います。

またATSUさんが武勇伝のように語っている1日5~12時間も勉強するというストイックさも、私自身は必要性を感じたことが一度もありません。何時間かけようが、座学で学べる英語と実践的に学べる英語は大きく異なるものだという認識が重要です。

 

「英語の基礎的な文法力や語彙力さえ足りていない人にとっては、ATSUさんの提唱する方法が良いのでは?」という意見がありそうですが、それへの反論として1つ、『多くの方にとっては基礎的な英語力の問題ではない』と気づきを与えそうな動画を取り上げたいと思います。

この動画はハリーポッターシリーズの子役、ダニエル・ラドクリフハリー役)とトム・フェルトンマルフォイ役)が子供の頃のもので、じゃれ合いながらフランクな英語(イギリス英語)を話しています。


www.youtube.com

みなさんはこの動画の英語を聞き取れたでしょうか?

全てではなくても良いので、最初のトムの英語(0:00~0:02秒)だけでも2、3回聞き、一語一句何を言っているか書き起こしてみてください。おそらく、全て書き起こせなかった方が一定数いると思います。

この動画でトムが喋っている英単語・文法は簡単なもの。下記に示す通り、おそらく中学卒業レベルでも理解できるものではと思います。

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トム: We're not really enemies. We love each other really.
ダニエル: Yes. I have polaroids so I can show you of Tom ...
トム: Shut up, shut up.
ダニエル: ... with his hair like spiked up
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『聞き取れなかったが上記の英文を読めば理解できる方』にとって、このトムの英語を聞き取るために必要な力は、単語力や文法力ではないと考えられます。単語帳や文法書を手に取って勉強したところで、これを聞き取れるようにはならなそうです。

多くの方にとって、これを聞き取るために必要なのは『英語ネイティブが実際に話す英語(既に知っている英語表現)に慣れること』なのかなと思います。

そしてネイティブの英語に慣れるためには、上述のように実践を通して英語を学ぶことが必須だと考えます。

 

ちなみに英語圏で3年以上生活している私はトムの部分は1回で理解でき、確認も含めさらに数回再生すれば一字一句書き起こすことができます。

その後の部分は、ポラロイドカメラチェキのようなカメラ)を20年以上使う機会がなかった私はpolaroidsにピンとこず理解するために意味を調べる必要があり、spiked upについてはパンクロックのスパイクヘアのことを聞いたことがあったので、ツンツンな髪形のことだろうなと文脈から予想した感じです。その他は一発で聞き取れ、理解できました。

私のここ3年間の英語習得方法のほぼ全ては、英語圏で英語中心の生活をしているだけです。生活しているだけとは言っても、現地の企業に勤めたり(私が勤める事業所は2022年2月時点で日本人ゼロ、英語ネイティブが7~8割)、英語ネイティブのハウスオーナーと暮らしたり、店で探しものを聞いたり、電話で歯医者の予約をしたり、所得税調整の手続きを英語で行ったり、テレビを見たり、YouTubeを見たり、本を読んだり・・・と、すべてが英語の実践になっています。

そしてここ3年間、英単語帳を開いて勉強したことは一度もありません。もちろん単語や文法でわからないものがあったら、都度Google検索等で調べ、それにより語彙力や文法の知識が増えていっている感じです。一度調べただけだと覚えられないことがほとんどで、何度も同じものを調べてしまったりもしますが。

 

色々書きましたが、ここで改めて伝えたいのは『Atsueigoで販売する教材や動画視聴がご自身の英語を本当に伸ばすかどうか、疑いの目を持ったほうがよい』ということです。

私としては、英単語帳を覚えたりATSUさんが日本語を話している動画をみたりする時間があれば、それを実践的な英語に触れる時間(YouTubeなどで英語の動画を見るのが特にオススメ)に充てるべきと思います。その方が絶対に英語力にプラスになります。

Atsueigoはお金儲け先行?

もう1つ注意喚起したいのは、Atsueigoがお金儲け先行型でないか慎重に見極めるべきということです。私がATSUさんの情報発信の仕方から頻繁に感じるのは、彼自身を成功モデルとして人を引き込む感じ、そして収益につなげる感じのコンテンツ作成です。

英語習得に苦労する人が思いがちな「なるべく早く(or 速く)英語がペラペラになりたい」ということや、英語習得のモチベーションとして聞こえがいい「ペラペラで自慢できるカッコイイ英語力を身に付ける」といった、そうした欲を助長するような書籍、ブログ、動画などがよく見られます。

私が彼ほど影響力がある立場で英語習得者にアドバイスをするなら、彼のように【数量限定】や【20%お得】などといった購買欲を駆り立てる文言とともに教材販売をするようなことはせず、「お金をかけずに英語習得する方法」を強く勧めると思います。

(ATSUさんのオリジナル商品として売っているDistinction という単語帳シリーズは、1冊で3,500円、3冊あるので全て購入すると1万円越え。大学受験でよく使われるロングセラーの英単語帳の相場が1,500円未満なことを考えると、値段が高すぎると感じます。)

また、自身が “日本語で” 解説する英語学習法についての動画(10回 × 約30分で10,980円。これも高すぎると感じます)を見ることよりも、英語ネイティブから英語を学ぶことを勧めたり、上述のように実践に近い形での習得に時間を使うことを勧めると思います。

さらには、「カッコよくなくたって伝わればいい。ペラペラやネイティブレベルでなくても良いので、伝わる英語を、正確な発音を心がけて丁寧に話すことが大切だ」と言うと思います。

 

余談ですが、「速く英語が上達したい」と焦りを覚える方に対しては私から言えることがあり、英語習得には時間がかかるので、焦らず継続的に取り組むべきということです。これは英語を第二言語として習得している仲間が皆、口を揃えて言っていることでもあります。

この言語習得に時間がかかることは、どうやら科学的にも根拠があることのようです。機会があれば別の記事でも論文引用付きで述べようと思いますが、言語習得には「subconscious(潜在意識)」や「unconscious(無意識)」の部分が非常に重要な役割を果たしているとのことで、意識下でいくら短期集中で英語を習得しようが、潜在意識・無意識のレベルで習得するまでには長い時間がかかるということが示唆されます。(ちなみに、人間の脳の活動のうち潜在意識・無意識に関するものが95%、意識下に関するものが5%と言われているので、潜在意識・無意識のレベルの言語習得の重要性はバカにできません

この潜在意識・無意識レベルの言語習得の重要性が正しいとすると、ATSUさんがいくら『最速でペラペラになる方法』を提唱しようが、Atsueigoメソッドにストイックに1日12時間取り組もうが、意識下で勉強している限りは、英語習得への些細な貢献にしかならない可能性さえありそうです。

おわりに

今回の記事では、ATSUさんやAtsueigoに関しての批判的な意見を正直に書きました。

英語圏で暮らしながら英語習得をしている一人として、たまたま目に留まったAtsueigoに対する考えをしっかり発信したかったのがこの記事を書いた理由です。

誤解してほしくないのは、批判したからと言ってATSUさんやAtsueigoを全否定するつもりはないということです。彼の学習方法論や単語帳などは、受験や資格試験のためであれば、間違いなくそこそこ役立つと思っています。

ただ、「英語ができるようになりたい」、「話せるようになりたい」とざっくり思っている方にとっては、やはり高すぎない目標設定でもっと実践的な方法こそが取り組むべきものなのではないかとも思います。

「Atsueigoが自身に合っていないかも」と感じる一人でも多くの英語習得者の方々に、一意見としてこの記事と私の考えが届けば嬉しいです。