今回の記事は、オーストラリアの山火事について。
2019年後半~2020年初めにかけてのオーストラリアの山火事は、世界的なニュースとなった。読者の方の記憶にも新しいのではと思う。
あれからもう1年ほど経つ(記載日 2021/2/2)のでタイムリーな記事ではないのだが、たまたま、私が住んでいる近くで大きな山火事が発生しているので、今回の記事を書くに至った。
オーストラリアの山火事
日本のニュース記事では「山火事」や「森林火災」と表されるが、現地では Bushfires という言葉が使われる。
オーストラリアは比較的乾燥した気候帯に属しており、山火事が起こることは決して珍しくない。例年、一定数発生しているこの山火事は、自然環境に大ダメージを与えるのではと思われるかもしれないが、むしろ植生景観の形成・維持や農業活動に欠かせない役割を果たしているようだ。
例えば、下記のような役割である。
- うっそうと茂ってしまった森が山火事で焼けることによって、新しい植物が芽生えるための明るい環境を形成する
- 木や草が焼けた後の野原は肥沃となり、農作物に好条件な土地を提供する
こうした役割を担う山火事。オーストラリアの人々にとっては生活の身近にあり、古くからうまく付き合いながら生活しているようだ。
2019- 20年に起こった山火事の規模
2019年後半~2020年前半の山火事は過去に例をみないほどの大規模なものだった。
比較のため、2019年に起こった他の山火事(最大規模のもの)を並べてみる。
場所と時期 | 消失面積(acres) |
---|---|
オーストラリア 2019-20 |
46M
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アマゾン 2019(12ヶ月計) |
17.5M
|
シベリア(7月) |
6.4M
|
アラスカ(夏季) |
2.5M
|
※ 1 acre = 0.404686 ha
2番目に大きな規模となったアマゾンの森林火災、これは、アマゾンの森林の15 - 17%が失われたほどと言われている。それと比べても、オーストラリアの山火事は2.6倍ほどの規模だったのである。
また、日本の国土面積が93M acresだということを考えるとその半分に迫る消失面積。いかに大規模だったかが伺えるだろう。
私の生活への影響
2019年後半から大規模に起こった山火事では、オーストラリアの東海岸がより大きなダメージを受けた。
報道で取り上げられるものの多くは、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州(シドニー含)、ビクトリア州(メルボルン含)など東海岸のもの。町全体を炎と煙が覆う、火傷を負ったコアラが救出されるなどの衝撃的な動画は、東海岸のものだ。
その一方で、私が住んでいる西オーストラリアのパース近郊でも一定の被害があった。
(ちなみに昨日(2021/2/1)火災が発生した地点は、Woorolooという町。パースの都市部からは45kmほど離れたところ)
実際に、私自身の生活への影響も。
具体的には、通勤で利用する道路が山火事によって一時的に閉鎖されたり、職場のすぐ隣の敷地まで山火事が迫ったりした。
下の写真は、職場の隣まで迫った Bush fire の実際の写真である。
山火事の原因
山火事の発生原因を地元の人に聞くと、落雷による自然発生的な原因もある一方、人為的なものも多いらしい。
機械(芝刈機など)からの発火、交通事故による発火、想定していた小規模な野焼きをコントロールできなくなってしまったものなどがその例である。
乾燥した気候および植生も、オーストラリアで山火事が大規模化しやすい原因となっている。気候区分で有名なケッペンの気候区分地図を見ると、オーストラリアの大半は乾燥した気候帯に属している。夏季の気候として特徴的な「高温、乾燥、強風」が山火事を急速に加速させるようだ。
私が実際に職場の隣で見た山火事も、上記3つの要因によって予想外の速さで火が広がっていた。
同じ職場に勤める地元の方は、「背丈が短い草がまばらに生えている草原では、炎が走るように広がる」と表現していたが、まさにその通りだった。
実際に見た山火事のコントロール
大半の山火事は消防隊によってコントロールされる。鎮火までの間、民家や施設、農場に火が届かないように、確立された方法のもとでコントロールされるようだ。
私の職場の隣まで迫った山火事もうまくコントロールされながら、周辺施設や民家に大きな被害を出さず半日以内のうちに鎮火した。
現場では、上空に2台のヘリコプターと1台の消火用の飛行機が飛んでおり、地上にも多数の消防隊がいた。
ヘリコプターは上空を旋回し、それらは全容の把握と火をコントロールするための指示を送っているとのこと。風向きから火の進路を予測し、人や建物、動物への被害を最小限に抑えるように消火していると地元の人は話していた。
下の動画は、実際に私が撮影した動画。消火用の飛行機が、空中消火を行っている様子が見て取れる
A water-bombing aircraft fighting a bushfire in Western Australia
2019-20年の山火事の沈静化と今後について
大きな被害を出した2019-20 シーズンの山火事だが、2020年の2月以降、幸い雨が広範囲で降ったことによって沈静化に向かった。
今回の山火事を大規模化させた要因の1つとして、気候変動による気温上昇や極度な乾燥が挙げられている。これは、気候変動による高温・乾燥化が進行する限り、今後も山火事が大規模化する可能性が高くなっていくことを意味する。
気候変動の問題はすぐに解決するものではなさそうだが、火災の大規模化を人為的に抑えられるような対策がなされ、今後は、2019-20のような被害ができる限り起こらないことを願いたい。