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英語力は資格試験からはかることができない | 日本人のための英語習得Tips


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コミュニケーション力(特に英会話力)という点で見ると、英語力をはかるのは本当に難しい。

当シリーズの「はじめに」の記事でも触れているが、仕事を含め、筆者は英語を使った必要最低限の生活をオーストラリアで送れている。
今の時点(2020/5/20)だとまず会話についてほとんど困らないだろう。もちろん現地のネイティブの会話全てを100%理解できるはずはないが、自分の伝えたいことは伝えられるし、相手が言っていることで何がわからないのかポイントを絞って聞き返すことができる。そういう意味で、最低限楽しい生活をこちら送るうえでの英会話に困る気はしない。

では筆者が何かしら人に誇れるような資格やその点数について取得実績があるかというと、そうではない。

人の英語力は資格を保持していることやその点数からははかることができないと筆者は考えている。
そう考えるように至った理由は2つある。
1つは、私自身、オーストラリアに来る前はある資格試験での点数は自慢できるほど高くはなかったが、そこまで低くくもなかった(TOEIC換算点690 (70%弱) ほど)。大学受験時もセンター試験本番と模擬試験では6~8割の点数を取得していた。では渡豪した時点で、英語でのコミュニケーション力いう点で、私が100点満点中の70点らへんの位置にいたかと言われると全くそうではない。こちらに来た瞬間から、この数字に何も意味がないという現実を知らされた。最初の数ヶ月は、英会話力がほとんどゼロに等しかった。
もう1つの理由は、日本人留学生でハイレベル(Cambridge CAE等)な資格保持者のなかにも、会話という意味では拙い英語を話す人達にこちらで出会った。逆に、出身国籍を問わず、目覚ましい資格を持っていないものでも英会話が堪能な人達にも会った。


資格試験で点数を稼ぐことと、実生活でコミュニケーションを取ることは全く別物だと断言できる。

まず1つの理由としては、筆者の偏見が強いかもしれないが、資格試験は多少なりとも、点数を稼ぐためのテクニックを知っている人の方が高い点数を取れる傾向にある。
例えば下記が思いつく。
 ・文法、語彙に関する選択問題で正解するテクニック(消去法で選択肢を絞る等)
 ・設問の答えを探すために戦略的にリーディングするテクニック
 ・時間内に解き終えるための問題を解き進めるスピード
 ・ある程度出題されるトピックや形式に傾向がある中でのリスニング、スピーキングに正解するテクニック

こうしたテクニックのことを脇に置いたとしても別物だと断言できる別の理由として、資格試験では、実践力よりも英語に関する知識にフォーカスしていることが挙げられる。

英会話で最も必要とされるのは、英語に関する知識ではなく、『相手の言ったことを理解する』、『英語を適切に使う』といった実践的な力である。
『相手の言ったことを理解する』というのは、純粋に英語を聞き取る能力だけでなく、聞き取れた言葉や状況から判断して相手の意図することをくみ取る力も含まれると考える。
『適切に英語を使う』というのは、正しく発音する、適切なリズムで話す、場面に応じて適切なフレーズを選んで話す、相手が退屈しないスピードで応答する等のことを指している。

英会話でさほど重要でないことも挙げてみたい。
リスニングテストの穴埋め問題で求められることがあるような、相手が言った英語を一字一句正確に書き起こせるような能力などは英会話ではさほど重要ではない。会話中に一字一句を頭の中で文字起こししている時間など無い。また、周りに雑音があるような場面では(雑音が皆無という場面の方が圧倒的に少ない)、我々人間の耳では物理的に全てを聞き取ることが不可能なこともある。
話す英語の文法の正確性は、多くの場合さほど重要ではない。ある程度語順が合っていて、時制も話の内容で察してもらえればオッケーである。最悪、英単語をいくつかぽつぽつと並べて、言いたいことを察してもらえれば無問題。実際に、とっさなことで頭が回らず、そうしなければならない場面は日常生活の中にはたくさんある。

上記が実際の会話で重要でないことを理解するために、友人との日本語での会話を文字にしてみるとよい。

例えば電話での会話で、
自分:今日何やってたん?
友人:えーなんも。ダラダラしてた。お前は?
自分:俺仕事だったは今日。めっちゃ忙しかったし。さっき帰ったばっかだわ。
友人:マジか。明日も仕事?

会話中に相手の話していることを一字一句意識的に拾っていないだろうし、文法はめちゃくちゃである。

これが日本語検定試験の設問等であれば、
自分:今日は何をしていたの?
友人:ずっと家にいて、何もしていなかったよ。○○さんは?
自分:私は今日、仕事をしていたよ。とても仕事が忙しくて、さっき帰ってきたばかりだよ。
友人:本当に?明日も仕事あるの?

などと不自然で固いやりとりになりそうである。このような、固くて正確な日本語文章での会話は我々の日常で起こりえない。
日本語を学んでいる海外出身者が、上のようなテスト用の不自然なやりとりを正確に聞き取れたところで、普段の我々のくだけた会話についてこれる能力を持っているわけではない。我々の英語についても同様なことが言えるであろう。

もう1つ英会話において重要なことがある。それは、話が広がる前提知識を英語で持ち合わせていることである。それを示す例として、あるとき私が髪を切りに行ったときのやり取りを挙げてみよう。これは渡豪して半年ほど経ったときの話である。
英語でのやり取りがどんなものだったか一字一句まで覚えていないが、こんな感じだったというものを書いてみる。ちなみに、美容師さんは地元出身の西洋系女性で、英語ネイティブだった。

美容師: そういえば昨日、AFL(オーストラリアンフットボール)の
     グランドファイナル(全国区の決勝)見た?
     Did you see the footy yesterday?
筆者: 見たよ。大差で勝負がついていたよね。
    Yes. I saw one team scored a lot.
美容師:うん、本当だよね。
     どっちもWAのチームじゃないからどっちにしろ私は白熱しなかったけど。
     試合のルールはわかるの?
     Yeah it was one-sided, wasn't it?
     Both teams were not from WA, so... to me it was boring anyway.
     Do you understand footy?

筆者: わからないよ。笑
    No, I don't.

この会話で強調したいポイントが2つある。
1つは英語スラング。Footyというスラングが使われており、これを知らないと一発目の質問の意味がわからない。
もう1つはオーストラリアのビッグイベントの把握。これも知らないと美容師が広げようとしているせっかくの話が広がらない。これを知っていて、実際にテレビ観戦していたことから話が少しだけ広がった。

この上記2つを知らなかったなら、会話がもっと退屈なものになってしまっただろう。例えTOEIC満点取得者であっても、『footyって何?』、『AFLのことなのね、知らなかった。』、『昨日決勝があったの?』などなど、美容師にとっては基本情報でしかないことを質問し続けてしまう話の展開になってしまったのではないかと想像する。

もっとも日本語での会話でも同じように前提知識を知っていたほうがよい場面がたくさんあるが、英語でのコミュニケーションにおいてもそれを軽視できない。こうした前提知識は、テストで点数を稼ぐために必要な能力よりも確実に重要性が高い。

ここまで、ポイントを絞れないまま色々と書いてきたが、一貫して、英語のコミュニケーション力は資格や点数でははかれないだろうということを言いたかった。読者のほとんどは、この記事を読む前からそれに気づいているのではないかと思う。気づいているにもかかわらず人の英語力をはかるときに何かしらの指標が欲しいがために、資格や点数で英会話力を評価したくなってしまう人もいるのではないか。これは日本の点数至上主義教育の弊害だと思う。ただ、私としてはそうした評価のしかたをオススメしたくない。

では、『他にどうしたら英語のコミュニケーション力をはかれるのか』という問いが挙がるだろう。
『何か指標となるスコアや数字はなく、実際の会話やテキストメッセージでのやり取りから総合的にはかるしかないだろう』というのが筆者の個人的な答えである。